君とまどろみ

いつも眠たそう

光のなかに立っていてね

 

 

 最近はまとまった時間を家で過ごしているのでなるべく映画を観ようと思っている。今日は「いちごの唄」という映画を見た。本当はシザーハンズが観たかった。シザーハンズは自分の体がはさみでできているから、あの子をどれだけ思っても、胸がきゅっとしても近づくことができない。抱きしめられない。遠くから見つめることしかできない。そういう切ないのが観たかった。アマゾンプライムにあると思ってたのになくて、Netflixのマイリストにしてある1つを選んで、観た。ちょっとネタバレ気味なので、これから観ようと思っているひとがいるなら、この記事はそっと閉じてほしい。

 

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 タイトルを聞いただけでピンと来る人もいるだろう。銀杏BOYZの峯田の曲からインスパイアされた映画。実際に峯田も中華料理屋の店主として出演している。七夕の日、天の川の女神あーちゃんを守るため、主人公コウタの大親友伸二は死んだ。数十年後、伸二の命日の日にあーちゃんと偶然の再会を果たし、環七沿いを散歩する。帰り際、毎年この日に会おうと約束する。コウタはこの日を楽しみに、カレンダーにばってんをつけて、日々を過ごす。何年かそうやってあーちゃんに会った。そのうち、会うのはもうこれで終わりにしようと告げられる。

 あーちゃんを思い、1日1日を生きるコウタ。早く過ぎ去ってほしいと願いながらも、ばってんがどんどん増えていき、日常はきらきらと光っていた。コウタにとってあーちゃんは光だったんだろうな。

 大きな地震で傷ついた少女に、iPodをあげるシーンがある。この少女は、のちにiPodを返しにコウタの元へ訪れる。少女はたくましく生きていた。わたしは震災関連の演出がとても苦手。つくりものにしかみえないし、なんならそれまでがどんなにいい物語だとしても興ざめする。妹2人と必死にテーブルに身を寄せて揺れが止むのを堪えた数十秒間。夜ろうろくを並べて聞いたラジオから流れる被害状況を伝える声。何日か経ったあと配られた朝刊には津波や火災の写真。それらをさっき起きたことのように全て思い出してしまうから。そんなわたしでも、この映画を観続けられたのは、この少女のようにわたしもあのとき、音楽に救われたからである。

 夜は絶望とともに、布団に入る。暗闇が余計恐怖感を増幅させる。わたしはSONYのピンク色のウォークマンでピンクのブタちゃんがついたイヤホンを耳に挿し、音楽を聴いた。2階のそれぞれの部屋で寝るのは何かあったら危険だからと家族5人でリビングに布団を敷いた。普段寝る時とは違う天井を見つめる。余震が来た時はどうしても怖かったけれど、揺れに気づかず寝息を立てる家族よりも音楽がわたしの支えになってくれた。あのとき聴いていたバンドの曲は、いまでも聴くことがある。高校卒業の年で、大学入学を控えた18歳だった。

 

 話はだいぶそれてしまったが、劇中の彼女が言った「本当に悲しいとき、癒やされたいとか思わないし。どういうものだと癒やされるのか、誰にもわからないし、人それぞれだし」がすごく好きだった。リアルだなって思った。最近よくわたしが思うことと似てて、はっとした。

 ストーリーが青いとか、役者がきれいすぎるだとか、いい意味でも悪い意味でも日本の映画っぽいなって思った。あと、峯田にわたしにはちゃんと伝わったよって言いたい。(尊敬を込めた呼び捨て)

 

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主題歌は「いちごの唄」だけど劇中歌の「ぽあだむ」のほうが映画では好きだったな

 

 

観たもの、聞いたもの、感じたものでしかわたしはつくられない。

 

明日は今泉監督の「街の上で」を観よう。

 

 

最後までつたない文章を読んでくれてありがとうございました。